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第三者割当増資と有利発行 

第三者割当増資有利発行
公認会計士  伊藤 勝朗

 御園座は興業不振による存続問題がしばらくくすぶっていましたが、この8月に33億円の第三者割当増資による資金調達に目途がつき一段落したようです。25年3月期決算では16億円の債務超過でしたが、当増資により資産超過に転じます。

 割当額は125円、これをトヨタグループや中日新聞等地元有力企業を中心に26百万株割当発行することにより33億円の調達とするものですが、この125円という値は同社のIR資料によると直近6ヶ月の平均株価147円から15%ディスカウントした値とのことです。(なおエディオンもLIXILを相手に第三者割当増資を行いますが、割当価格557円は直前1か月の平均株価そのものです。)

 御園座の既存の発行株数は22百万株でしたので今回の増資では発行株数が倍以上となりますが、ちょうど同数の株数を割り当て株数を倍にするとした場合147円の株式価値を保有している既存株主は勝手に125円の株式で他人に割り当てられると単純計算では株式価値が中間値の136円に希薄して減じることになり、損害を被ることになるかもしれないということになります。(もっとも、増資額目標達成との公表の直後から株価は180円~200円で推移していますので、当増資は世間によい受け止められ方をされたものと考えられますが、これは結果論でもあります。)

 このような勝手な有利発行増資を安易に許さないため、会社法では有利発行について一定の制限を課しています。すなわち募集株主を引き受ける者に特に有利な金額である場合には株主総会特別決議(2/3以上の賛成)を要することとしています。有利発行決議を経ない第三者割当増資は既存株主による発行差止請求の対象となります。

 その点、今回の増資においては事前の定時株主総会において増資について株主の了承を得ており問題ありません(決議内容:過去数ヶ月平均値の10~20%ディスカウントとした額かつ最低100円以上とする)。
 債務超過状態の下で再起への希望期待を持って株式を手放さないできた既存株主にとっては地元名士によるニューマネーの流入で将来への目途がつくことのほうが重要で、多少のディスカウントは問題とされなかったものと考えられます。
 
 有利発行は会社法上の問題のみならず、税務上も問題とされる可能性があり注意が必要です。すなわち既存株主と有利発行を受けた新株主間での寄附と受贈益の問題です。これは上場企業のみならず非上場企業でも同じです。
 有利発行となるディスカント率については会社法では示されていませんが、法人税基本通達等ではおおむね10%相当額以上とされ、また上場企業での日本証券業協会の自主ルールとして10%という値が示されています。しかし判断のもととなる株式時価をどのように定めるのかについては会社法も税法も示していません。増資等の資本政策は会社法・税法・株主間利害や見通し等を総合的に俯瞰し一歩一歩慎重に組み立て考えてゆく必要があることだけは間違いありません。
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[2013.09.01(Sun) 15:00] 会計コラム | Trackback(-) | Comment(-)
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日本でのIFRSの動向 

日本でのIFRSの動向
公認会計士  伊藤 勝朗

 この数ヶ月、IFRS(イファース・国際財務報告基準)に関する動きがまた激しくなってきました。

 IFRSとは主に欧州を中心に世界100カ国以上で適用が開始されている国際統一会計および開示基準です。日本においても数年前までは導入議論が盛り上がってきていましたが、様々なデメリットも喧伝されており喧々諤々状態のところで2011年3月に東日本大震災が発生し、さらにその6月には自見金融担当大臣が2015年3月期強制適用説を否定・延期したことで一気に熱が冷めた形となっていました。

 また、日本でIFRS熱が進まないもう一つの理由としては米国の動きがあります。米国にも米国会計基準があり、IFRSを適用するかどうかの議論を重ねてきましたが、2012年7月の米国証券取引委員会最終報告書では適用期限を明言しませんでした。日本は米国の動きも両睨みしていますので、この最終報告は日本での熱を更に下げることになりました。

 IFRSは日本でも任意的に早期適用が始まっていますが、2013年3月期まででHOYAや楽天等20社に留まっており、4000社前後の上場企業のほんの一部となっています。

 そんな状況の下、この6月~7月に自民党、経団連、企業会計審議会が続々とIFRSに関する意見書を発表しています。ほぼ同じ方角を向いている内容ですが、要旨としては「任意適用要件を緩和し、早期適用会社の拡大を促す」「IFRSの会計基準をそのまま適用することはきついので、新たに日本版修正IFRSを策定しそちらも適用可とする」といったところです。

 上述のようにIFRSは早期適用が認められており、また米国にも上場している会社については米国会計基準の適用も認められています。これに日本版修正IFRSが加わると、本来の日本基準も含めて4つの会計基準(中小会計指針や中小会計要領を含めるともっと?)が並立することになり、混迷の度合が増します。さすがに多すぎると言う意見も良く見られます。
 IFRSの動向についてはまだまだ議論が尽きないようです。IFRS会計基準の考え方についてはまた別の機会に書きたいと思います。

[2013.08.01(Thu) 15:00] 会計コラム | Trackback(-) | Comment(-)
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企業価値評価鑑定と不正 

企業価値評価鑑定と不正
公認会計士  伊藤 勝朗

 この5月31日に日本公認会計士協会から「企業価値評価ガイドライン」の改正草案が出ています。
 上場企業は市場価格(企業価値)が明確ですが、非上場企業では相続や個人間贈与といった税法に完全に縛られる局面を除いては企業の価値を規定する法律はありません。各々の事情や立場によって価格はいろいろな見方考え方をすることになりますが、その様々な考え方を研究整理したものとして「企業価値評価ガイドライン」が発行されました(平成19年、全163ページ)。

 今回このガイドラインが改正されることになった事情に大きく絡んでいると考えられるのが例のオリンパス事件です。オリンパス事件では零細企業を数百億円で買収した形をとり、そのお金を還流して隠れ含み損失への充当を図ったものですが、買収にあたっては外部の会計士の鑑定評価書のお墨付きがあるので問題ないものとして取締役会や監査をクリアしました。

 鑑定評価書では、オリンパス社から提示された当該零細企業の事業計画が現在は赤字だが数年後に数十億円になるハズというものが提示されたためそれに準拠して算定し、その結果鑑定額が数百億円になったとしていますが、無謀なバラ色事業計画に対しては何ら無批判でありいかにも問題があります。当該会計士は今年3月に金融庁より3ヶ月の業務停止懲戒処分を受けています(処分理由『正当な注意を払って適切な判断で誠実に価値算定を行ったとは認められず』云々)。

 新ガイドライン草案ではくどいぐらいに「評価が不正に利用されないように留意すること」「提供された情報を無批判に、機械的に使用するのではない」「全体観・慎重さ・総合性の保持、それらを発揮できないと判断した場合には業務を受嘱しない」といった記述が付け加えられています。

 オリンパスのように誰が見てもフカしすぎな案件であればこれらの文言も生きてきますが、では「ちょっとバラ色に見積もった」「それに従い鑑定書を作成した」「それを売る側買う側も納得した」というような案件で、どこからがアウトになるのか、なかなか線引きが難しいと思います。かつてICFという会社の株価算定において鑑定人会計士が(業務停止で無く)逮捕されたという事件もあり、そのときの事業計画は現在1千万円の利益が数年後に2億円になるというものだったようです。この場合の逮捕は別の様々な背景があったのだとは思いますが、何にせよ一層気を引き締めて慎重に物事にあたらざるを得ないと思います。

[2013.07.01(Mon) 15:00] 会計コラム | Trackback(-) | Comment(-)
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仕組債による資金運用  

仕組債による資金運用
公認会計士・税理士 伊藤勝朗

 この5月に藤田保健衛生大学を運営する藤田学園が、リスクの高いデリバティブ取引などで巨額の損失を出したのは証券会社による違法な勧誘が原因として、260億円の損害賠償を求める訴訟を起こしています。また南山学園や駒澤大学などにおいても軒並み100~200億円を超える運用損を発生させたとして社会問題化しました。

 これらの運用損は多くの場合、3%~8%といった高利回り債券という形をまとって商品勧誘され、数年後にその裏にある仕組みによる損失が露呈するのが常道と思われます。手許に多額の資金があり、高利運用が期待されている学校法人や医療法人、地域系金融機関等の資金担当者などが、メガ証券・外資系証券などから重点的に勧誘されたようです。

 この債券(仕組債)に内在するリスク・条件の形は様々ですが、多くの場合
・一定以上の円高水準にある場合一切の利息が支払われない。債券を売る手段・市場も無く償還期限の30年後まで何も生まない不動の塩漬けとせざるを得ない。
・かといって円安となり高利が発生したとしても利息が一定額累積すると発行側から強制償還させられる(コーラブル)。
・株式と連動しているものもあり特定銘柄の株価が一定額(ノックイン価格)以下になると当該株式として強制償還される(株式時価は債券面額を大幅に下回る)。
などどいった条件が付されています。

 証券会社は上記債券の勧誘時に高利回りを重点的にセールスポイントとし、リスクや条件をあまり語っていない状況も多かったのではないかと思われます。藤田学園はその点を問題視し提訴に踏み切ったものと思われます。

 ゼロ利率時など、これら債券の時価は理論上(大幅な)額面割れとなりますが、学校法人会計では時価評価が強制されていないこと、流通市場が無いため市場時価が有るわけではなく理論時価を専門家や証券会社に算定してもらう必要があることなどからなかなか露呈しづらいという面もあります。

 結局は近時のMRI事件でもそうですが「おいしい話は存在し得ない」ということになります。一点、昨秋までに前倒し解約で損失を確定させた法人はこの半年の為替や株価の動きをどう見ているかという点は気になります。
[2013.06.01(Sat) 15:00] 会計コラム | Trackback(-) | Comment(-)
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債権管理はできていますか 

債権管理はできていますか
公認会計士  伊藤 勝朗

 会社や医療機関等にお邪魔すると債権管理が完全にはできていないケースにあたることがあります。
 債権管理が完全にできている状態とは、月末等ある時点の売掛金/未収入金の残高内訳が、客先別は当然のこと、いつ・何を・単価どれだけで・いくつ売ったものかが即座明確に分解判明する状態をいいます。

 請求額をまるで払ってこない、あるいは遅延/分割入金を申し入れてくる客先は当然管理対象となるでしょうが、ここで問題とするのは請求額にほぼ近い入金だがやや差異があるといった事例です。このような場合のよくない管理方法としては、差異未入金分は翌月繰越残高総額に含まれ継続して請求するためそれで良いとして、何が入金差異の原因だったかを追及・整理・記録をせず、何となく膨らんでゆく債権残高をそのまま放置するケースです。

 請求書どおり払ってこない客先は客先なりの管理方法で支払うべき仕入について把握しそれに基づき支払ってきています。請求元としては当月何が支払ってもらえなかったのか、その原因が当社にあるのか客先にあるのかを把握し、タイムリーに先方と交渉・認識のすり合わせを行い、次回以降の請求に適切に反映することを行います。主な差異原因としては、締め日近くの出荷のための先方未検収、合意単価や値引交渉結果の認識相違、当社における返品未処理、振込手数料や送料の相殺認識ずれや未処理、消費税端数処理方法の相違、あるいは売上計上漏れ等々の要因が考えられます。うち当社要因のものについては決裁を経て売上の修正に繋げるとともに、業務フローの見直し等の再発防止策を講じます。

 このような処理を怠り放置し、債権が膨らんできたころに何となくの債権総額で客先に交渉に行っても、客先からは「当方としては支払うべきものは支払っている。更に未払があると言うのなら何を支払っていないのかの明細を提示せよ、話はそれからだ。」とけんもほろろな対応をされるのがオチと思われます。また、社内においても担当者単独の判断による債権の値引償却、あるいは客先と結託するなどした不正に繋がることにもなりかねません。

 そのようなことにならないためにも、債権管理台帳をしっかり整備し、上長や社内で認識を共有しておくことが肝要と思われます。また、同様のことが債務側(買掛未払金や預り金)でも生じているケースも時折見かけます。B/S管理はしっかりやりましょう。
[2013.05.01(Wed) 15:00] 会計コラム | Trackback(-) | Comment(-)
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